2018年7月2日月曜日

雨月物語―現代語訳付き【読書感想文】


巷に跋扈する異界の者たちを呼び寄せる深い闇の世界を、
卓越した筆致をもって描ききった秋成の本格怪異小説。
著者 上田 秋成 (著), 鵜月 洋 (翻訳)
出版 角川ソフィア文庫

江戸期に作られた怪異小説、江戸に作られた話であって江戸の怪異が
題材なわけではないので注意
1話目が崇徳天皇の陵墓へ向かった西行の話。
2話目が学者と、その学者の友人になった武士の話。
3話目が都に向かった夫を待つ妻の話。
4話目が鯉の絵が上手い坊主の話。
5話目が熊野へ参拝しに行った親子の話。
6話目が放蕩夫とその妻の話。
7話目が誰より美しい女と出会った男の話。
8話目が坊主と美童の話。
9話目が無類の金好きの武士に起こった話。
1話1話はそんなに長くない。

内容はまさに怪異小説である。ここで一つ注意だが、ここでいう怪異は
化け物、という意味ではなく不思議なこと、という意味で使われている。
なのでネットの怖い話にあるような、背の高い化け物に魅入られたとか、
顔のない人間に襲われたとか、寺生まれのTさんとかは一切出てこない。
近いのは落語の怪談話だろう。怖い話というよりは不思議な話、
という色が強い。
幽霊や怨霊も出るには出るが、意思疎通もできず、
「野郎オブクラッシャー!!」という風に追いかけてくることもなく、
「末代まで呪ってやる・・・」という古式ゆかしい幽霊像である。
逆に・・・いやネタバレはよそう。いい話っぽいのもある。
あくまで怪異をもとに人間を描いた作品のようにみえた。

総評して、いかにも古典という風味の怪談集、と思って間違いない。
またタイトルにもある通り現代語訳だが、
少し古風な言い回しであるため注意。注の入った原文も載っている。