2018年6月30日土曜日

たいした問題じゃないが【読書感想文】

イギリスの新聞コラム傑作集。ギリス流のユーモアと皮肉を最大の特色として、身近な話題や世間を賑わせている事件を取り上げ、人間性の面白さを論じてゆく。

出版 岩波文庫
著者 行方 昭夫(翻訳)
日常の雑事や新しく決まった制度や新しい考えについて
時に面白く時に真面目に色々な話を展開していく。
誰かの悪意を引き起こすことについて、
人間の無意識に起こす行動について、
自由を得るには誰かの自由を侵害するということについて、
とかとか。

本題が面白いのはもちろんだが、この本はその本題に入るまでの流れが
非常に巧みで読者の関心と笑いを誘う。
本題にもっていく前に小話をするがこの話が面白い。
どことなく落ちの想定できる生活感溢れる小話だ。
最初の悪意の話ではこう始まる。
「最近会っていない友人と、そこそこ重要な話を手紙でしていた。
 私が送った手紙の返事が長らく彼から帰ってこない。
 不思議に思って日々を過ごしていると、偶然彼と出会った。
 ところが彼は私に対し冷ややかな目をむけるではないか。
 どういうものかと不思議に思いながらまた日々を過ごしていた。
 ある日机の整理をしてるとなんと彼に送ったと思っていた手紙が
 まだ机の中にあるではないか!」
という小話から始まり、本題に入っていく。
ちなみにこの話の結論は
「悪意を持つ、持たれることはあるが、本当のところは
 偶然の出来事、あるいは不幸が重なっただけかもしれない。
 お互い相手の悪意と決めつけるのではなく少し話でもしてみては?」
と終わる。

内容には、最近のものでないだけに少し古臭いと感じるものもあるが
子気味良い小話と英国らしい皮肉の効いたジョークは読む価値がある。